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腰部脊柱管狭窄症について

腰部脊柱管狭窄症とは

 

 腰部脊柱管狭窄とは、背骨のの中を通っている神経組織(馬尾、神経根)と周囲組織(骨あるいは筋肉などの南部組織)との関係が何らかの理由で崩れ、神経症状が引き起こされている状態です。いくつかの原因が考えられますが、多くの場合神経組織に対し周囲の骨や筋肉などによる機械的な圧迫が原因となります。腰部脊柱管狭窄症はそれだけが単体で影響しているというよりも、さまざまな疾患が関与していることが多いので、さまざまな腰痛の一つの病体として把握することが重要であります。

脊柱管狭窄の種類

 

 脊柱管狭窄には国際分類が以下のものになります。

①変性脊柱管狭窄:脊柱管狭窄症のほとんどの方はこの変性型に当てはまります。特徴としては男性に多く見られ、一つの椎間ではなく、多椎間に見られることが多いです。一方で、変性すべり症による狭窄は女性に多く見られ、多くは腰椎4番〜5番の間に起こります。

 

②合併狭窄:合併狭窄とは例えば、もともと椎間板ヘルニアもある方が脊柱管狭窄になることなどであり、臨床上でも多く見受けられる症例です。

 

③医源性脊柱管狭窄:以前に腰痛の症状で手術を受けたりしたことが原因となり狭窄症になることです。

 

④外傷後の脊柱管狭窄:腰痛の骨折や脱臼後に起きる狭窄症です。

脊柱管狭窄の症状

 

 腰椎脊柱管狭窄症では以下のような症状が特徴とされています。

・神経性間欠跛行:脊柱管狭窄症で一番多い症状です。神経性間欠跛行は、歩行により出現する自覚症状といくつかの所見から馬尾型、神経根型、そして混合型の3群に分けられます。この神経性間欠跛行は、姿勢により症状が変化することが特徴です。例えば歩いていて症状を感じた時、身体を前に曲げたり、しゃがみ込むと症状が楽になったり消失し再び歩くことができます。この特徴は動脈硬化症などによる下肢痛(血管性間欠跛行)と鑑別する上で重要な所見となります。

 

・馬尾性間欠跛行:症状の特徴は両側の下肢、臀部、会陰部の異常感覚です。痺れ感、灼熱感、火照りと感じ、下肢の筋力低下や残尿感も現れます。一方痛みを訴える人は比較的少ないと言われています。検査ではアキレス腱反射が消失すると一つサインとなります。

 

神経根性間欠跛行:症状は下肢や臀部の痛みが特徴です。一般的には神経根が影響を受けているため方側に症状が出ることが多いです。

脊柱管狭窄の治療

 

神経障害が「神経根性」か「馬尾性」によって大きく異なっています。神経根性の場合は自然と緩和することも多く保存治療が第一選択となります。日常生活指導、薬物療法、ブロック療法、装具療法などを組み合わせて進めていきます。それでも効果が見られなかった場合のみ、手術が選択肢として考えられます。一方、馬尾性の場合は有効な保存療法が少ないため手術が選択されることも多くあります。

脊柱管狭窄に対する運動療法

 

 重度の馬尾性の神経障害のため直ちに手術を選択しなければいけない場合を除いて、脊柱管狭窄に対して運動療法はとても重要となります。実際運動療法によって完治するわけではありませんが、これ以上症状の悪化を防いだり、少しでも生活の質の向上(QOL)を目指すために大変常用となります。始めて運動療法をやっていく上で重要なのは⑴それぞれの状態にあった運動を行うこと⑵無理のないように少しずつ負荷を増やしていくことです。ここで脊柱管狭窄で特に有効とされる運動である「ペルビックチルト」を紹介します。まず言葉の説明ですが、「ペルビック」とは日本語で「骨盤」を表し、「チルト」とは日本語で「傾ける」という意味になります。では順にやり方をご説明します。

 床に仰向けで横になります。膝は90°に曲げ、手は身体の横に起きます。骨盤を床の方に倒していくのですが、その時意識として自分のおへそを背骨の方に向かって引っ張る様なイメージで行うとやりやすいと思います。骨盤がうまく垂れると、背中と床の間にある隙間がなくなり、骨盤が胸の方へ動くのがわかると思います。気をつけることとして、骨盤を床に近づけるときに、足の力を使ってやらないようにすることです。このポジションをまず作ることができると、先ほどお伝えしたように腰椎の屈曲位になるので、腰椎狭窄症が楽になる姿勢を作りやすくなります。また、ペルビックチルトの状態で膝を抱え込む動きを加えることで、より、椎間関節が開き症状の緩和になりやすいです。


日常生活で気をつけること

 

 普段の普段の生活のなかで症状が悪化しないように、気をつける動作などを伝えることも重要となります。特に、脊柱管狭窄では体幹部を曲げて屈曲させることで症状が和らぎやすいので、次のようなことをお伝えします。

 

・外を歩くときは杖などを使用したり、スーパなどで買い物するときなどはにショッピングカートなどに寄りかかりながら動くことで対幹部の屈曲位を作ることができ、痛みを軽減させやすくなります。

 

・自転車を持っている方であれば、歩きではなく自転車を積極的に使ってもらうことで、楽な体勢を作りやすく症状の緩和に繋がりやすいです。

 

・椅子に座る際に硬く、真っ直ぐな椅子ではなく、背もたれが斜めになったものを使うと楽に座りやすくなります。

 

また、人によってはコルセットを使うことで症状が和らぎやすい人もいます。しかし、コルセットを使用するのであれば症状が強く出ている期間のみを勧めます。理由としてはコルセットを長期間使用してしまうと、身体を支える筋肉などが弱くなり、結果的に痛みが強くなってしまう場合があるからです。