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脊椎分離症・すべり症

脊椎分離症・すべり症の概要

 

 脊椎分離症とは背骨の後面にある関節間部と呼ばれる場所が何らかの理由で欠損し、その結果背骨が前後に分離を起こしてしまう状態です。これが分離だけではなく、前の椎体が前方に移動してしまうことを脊椎すべり症と呼びます。最も脊椎分離・すべり症が起こりやすい場所は腰椎5番〜仙椎1番の間で、次に起こりやすいのが腰椎4番〜5番です。稀ではありますがこれより上の分節で起こることもあります。

 脊椎すべり症は子供や若い年齢で発症しやすいです。しかし、たとえ脊椎すべり症になっても痛みまで感じる人は少なく、痺れなどの神経症状まで発展するケースは稀です。症状で多く出やすいのは腰痛と足の痛みで日常動作の制限に繋がる場合もあります。実際、脊椎分離症の結果脊椎すべり症がなることが多いため、この二つの用語は同じものとして扱われることも多いのが現状です。

脊椎すべり症が起こる原因

 

 椎間患部は上下の椎間関節を繋げる役割があり、薄く血液の供給も悪いため外的なストレスに弱い構造になっています。ただし、基本的にこの部分が骨折を起こしても痛みや症状は出ず、外傷による骨折はそれほど多くありません。どちらかというと繰り返す動作で少しずつ影響を受け、結果的に骨折を起こします。一番起こりやすいのは腰椎の一番下である腰椎5番〜仙椎1番の間です。脊椎滑り症で生まれてくる赤ちゃんはいないことから、遺伝的なものはないと考えられています。青年期に椎間患部を骨折し、大人になり症状が出始めるということが一般的に多く見られます。また、腰椎5番と仙骨の間は強力な靭帯(仙骨翼靭帯)によって繋がっており、椎間間部を骨折したとしても容易には前方に滑らないような構造になっています。

脊椎すべり症のグレード

 

 すべり症には度合いを確認するためのグレード4段階あります。下の椎体に比べ上の椎体がどの程度滑っているのかを確認するために用います。

 

・グレード1:下の椎体と比べ25%以内の滑りが確認できる。

・グレード2:下の椎体と比べ26~50%の滑りが確認できる。

・グレード3:下の椎体と比べ51~75%の滑りが確認できる。

・グレード4:下の椎体と比べ76~100の滑りが確認できる。

脊椎すべり症の症状

 

 脊椎すべり症で多く見られる症状は以下のようなものになります。

 

・腰部の奥の方に痛みを感じる。

・臀部や太ももの後面まで広がる痛み。

・歩く、立つ、背中を反らす動きなどを行った時に痛みが強くなる。

・前屈みに座ると痛みが和らぐ。

・歩くと足がすぐ疲れてしまったり、しばらくすると痺れを感じたりする。

・膝よりも下(足底も含む)まで痛みが広がることがある。

・太ももの裏側の筋肉(ハムストリングスが)が常に固い状態である。

 

 

脊椎すべり症がどのように痛みを引き起こすのか

 

 脊椎すべり症は若い頃は症状を感じていなくても大人になるにつれて症状が出始めることがあり、特に30〜40代が多いと言われています。大人になるにつれ症状が出やすくなる大きな理由は次の二つになります。

 

・椎間板の退行性変化:最も大きな理由は年齢を重ねるにつれて腰椎椎間板がすり減ること、そしてすべり症で椎間関節部の支えがないため背骨にかかる剪断力を受けやすくなるためです。通常であれば椎間関節が背骨に掛かる剪断力を抑えてくれますが、分離を起こしているためその保持する力が働きません。椎間板は通常上からの荷重に対してクッションの役割をしていますが、横からの剪断力には強くなくそれによって椎間板本来の機能が落ちやすくなります。その結果、徐々に椎間板が変性し痛みを起こしていきます。

 

・神経の圧迫:椎間板が変性しすり減っていくことで、本来あるはずの神経根出口のスペースが狭くなり、足に神経症状を感じるようになります。立位や歩行しているときは神経根の出口である椎間孔が狭くなりやすいという解剖学的特徴があります。反対に座位の姿勢は椎間孔が広がりやすくなるのですが、椎間板への負担が立位より約3倍かかるため一概に座っている方が良いとも言えません。

脊椎すべり症のトリートメントの種類

 

 脊椎すべり症に対するケアの方法は腰痛と比較的似たようなアプローチで行われます。次のようなものが代表的なものになります。

 

・痛み止めの薬:主にはNSAID's(非ステロイド)を中心としたものが使用されます。

 

・アイス&ホットパック:特に急性期で炎症が強く感じる時はアイスパックを使い炎症を抑えます。炎症が収まり、周りの組織が固まるのを防ぐことを目的とした時はホットパックが使用されるのが一般的です。

 

・徒手療法:カイロプラクティックなどの徒手療法は脊柱や骨盤の動きを改善するため、有効であると考えられています。

 

・ストレッチなどの運動療法:特に腰部や足に対するストレッチは適切に行うことで有効だと考えられています。

脊椎すべり症の運動療法

骨盤体操

 ここで脊椎滑り症で効果が期待できる運動「ペルビックチルト」を紹介します。「ペルビック」とは日本語で「骨盤」を表し、「傾ける」という意味の「チルト」合わさった言葉になります。やり方は以下のようになります。仰向けで横になり、膝は90°に曲げ、手は身体の横に起きます。骨盤を床の方に押すように倒していきます、コツとしては自分のおなかを背骨の方に向かって引っ張る様なイメージで行うとやりやすいと思います。骨盤が垂れ、背中と床の間にある隙間がなくなると、骨盤が胸の方へ動くのがわかると思います。注意点として、足の力はできるだけ使わずに行うことです。このポジションを作ることで、腰椎の屈曲位を作れるため、脊椎すべり症に効果が期待できます。


脊椎すべり症に対するカイロプラクティックケア

 

 ここではカイロプラクティックケアでどのように施術を進めていくか紹介します。どこの部位に痛みや不調があったとしても、カイロプラクティックではまず脊柱全体を評価していきます。なぜなら、たとえ腰に痛みがあったとしても背骨は繋がっているので全体に影響を出すと考えるからです。

最初は現在の状態を詳しく知るためにカウンセリングを行い、症状がなぜ起こっているかを確認していきます。次に関節の動き、筋肉や靭帯など軟部組織の状態を静的・動的の身体検査で見極めていきます。その中で脊柱や軟部組織に問題があれば施術の対象になっていきます。また、立位と座位での姿勢のチェックや歩行パターンも確認し身体の代償反応が起きていないかも確認します。またこの時点で脊椎すべり症の度合いが強いと判断した場合は先に病院での受診を勧めます。カイロプラクティックケアでの目標はあくまで脊椎すべり症に対してケアを行うというより、脊柱の状態を主に回復させ、ご来院される以前よりもより良い健康状態を作ってもらうことです。それを念頭に入れた上で次のような施術を主に行っていきます。

 

・脊柱に対するマニピュレーション:関節の動きが悪くなっている場所を特定し、調整(アジャストメント)を行っていきます。それにより神経機能が戻り、周りの筋肉などが緊張が取れやすくなります。

 

•トリガーポイントセラピー:検査を通して見つけた過緊張を起こしている筋肉に対して手技を用いて緊張をとっていきます。

 

・PNFなどの運動療法:抵抗を用いたストレッチなどを行い、状態の改善と予防法などのアドバイスも行います。

 

 この他にも必要であれば器具を使い調整などを行うケースもあります。