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スポーツヘルニアについて

スポーツヘルニアについて

 

 長距離ランナーやサッカー選手であれば一度は”スポーツヘルニア”という言葉を聞いたことがあるかもしれません。原因に関わらず”グロインペイン”と呼ばれる鼠蹊部周辺の痛みを総称してスポーツヘルニアと呼ばれることが多いです。スポーツヘルニアと呼ばれる鼠蹊部周辺の痛みは多くのアスリートが悩んでおり、その正しい理解をすることはとても重要となります。また、スポーツヘルニアを正確に判断することはドクターでも難しいため、患者さんのスポーツ歴や症状の出方を一つの指標として判断材料にするケースも多くあります。

 そこで、今回のブログではスポーツヘルニアのや共通の原因や症状、治療法などについて考察したいと思います。

解剖学からみたスポーツヘルニア

 

 下腹部から太ももの上部にかけてはスポーツヘルニアに関わる多くの重要な組織(筋肉、靱帯、腱など)が存在し、互いに密に連携し構成されています。神経痛は腸骨下腹神経、腸骨鼠径神経を含むいくつかの場所から派生して症状を出します。骨盤を安定させる筋肉は多く存在するため、それに伴って筋の損傷部位も数多くあります。最も多く見られるパターンは、腹直筋が恥骨付着する場所での障害と内転筋の腱の付着部です。

スポーツヘルニアの原因と危険因子

 スポーツヘルニアを経験しやすい人は次のような人です。

 

・サッカーやラグビーなどのように強度の高いランニング、ジャンプ、体幹をひねる動作をするスポーツ選手。

・レベルの高いところでスポーツを行なっているプロスポーツ選手

・男性の方が女性よりもスポーツヘルニアになりやすいと言われています。

・体幹を安定させる筋肉が弱い人。なぜなら体幹が不安定なことで鼠蹊部を痛めやすいため。

 

上の項目に当てはまり鼠蹊部に痛みがあるスポーツ選手は、スポーツケアの専門家に状態をしっかりと判断してもらうことが重要となります。

スポーツヘルニアの症状

 

スポーツヘルニアの症状は股関節痛と類似点が多いため評価するのが難しく、症状を断定するための有効なテストはありません。また、症状は感じにくいものも多く、アスリートは自分のパフォーマンスがなぜ落ちているのかわからないケースも多くあります。

 

以下の症状はスポーツヘルニアによく見られます。

 

・怪我が起きた時、股関節に強い痛みがあった。

・休んでいる時は痛みがないが、スポーツを行うと痛みが出る。

・片側の股関節だけが痛む

・身体を捻っている間だけ痛みが現れる。

・咳など腹圧が上がった時に痛みが出る。

・股関節痛の痛みが日に日に強くなっている。

     

仮に上記の症状がなかったとしても、スポーツのパフォーマンスの低下や股関節痛がある場合は、スポーツヘルニアになっている可能性も考えられます。

スポーツヘルニアの治療法


 スポーツヘルニアの治療法は専門家の間でも大きく意見が分かれています。ある先生は休息と痛み止めの薬、カイロプラクティック などの徒手療法を推奨する一方で、手術をして取り除くことが重要だという先生もいるのが現状です。

手術をしないことを推奨している人たちは、次の4つのことをすることが望ましいと言っています。

・休息:4週から6週の間、運動することを止め、症状が回復する時間を設ける。

・痛み止めの服用:NSAIDs系の鎮痛薬の服用

・徒手療法:休息期間が終了したら、カイロプラクティックを含む徒手療法にて身体全体のケアを行い、再発しないようにトレーニングなどを行なっていきます。

・ブロック注射:いくつかのスポーツヘルニアに対する痛み止めの注射はいくつか存在しますが、基本的には神経ブロック注射を腸骨下腹神経、腸骨鼠径神経に対して行い痛みを和らげます。

 

スポーツヘルニアと診断を受けたスポーツ選手は、専門の知識を有した人と、治療計画を作り実行していくことが重要となります。必要であればセカンドオピニオンなども考慮に入れることが求められます。