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四十肩・五十肩について

四十肩・五十肩とは

 

 四十肩・五十肩になると肩の痛みや固さ、可動性の減少が起こり、「服を着ること」や「上にあるものを取る」などの日常動作にも支障をきたすようになります。

 

 人口の約2%の方が四十肩・五十肩で悩んでいると言われ、名前の通り40〜60代の人に起こりやすいと言われています。また女性の方が男性よりも多く、糖尿病などの基礎疾患を持っている方もリスクが高いと言われています。

 

 肩関節の周りを取り囲む関節包が炎症を起こし、治癒過程の中で靭帯組織が徐々に肥厚していくため動きの制限が出てきます。初期の頃の四十肩・五十肩は関節唇の損傷や、ローテータカフ損傷と似たような症状が出るため、適切な評価が重要となります。また四十肩・五十肩は医学用語で「癒着性関節包炎」と呼ばれています。

どのように四十肩・五十肩は起こるのか?

 

 四十肩・五十肩は次のように起こります。

 

・肩関節の関節包が炎症を起こすことで周囲の靭帯組織が腫脹や肥厚し、結果として組織が傷つき治癒過程で周りに癒着していきます。組織の癒着が進むにつれて肩関節の動きは制限されていき、同時に痛みも引き起こすようになります。

 

・肩関節の動きが悪くなると、関節の中で潤滑油の役割をしている滑液が少なくなり、結果として動きの制限や痛みを引き起こします。

 

 四十肩・五十肩はでは上記で述べたことが徐々に進行していき、気づいた時には肩が動かしづらくなっているということが一般的です。

四十肩・五十肩

三つのステージ

 

 四十肩・五十肩には三つのステージが存在します。それぞれの段階は数週間から数ヶ月続くこともあります。

 

1、急性期(炎症期):痛みが特にと良くなる時期です。

2、慢性期(拘縮期):痛みは治ってきますが、肩関節の固さや可動制限が起こっていきます。

3、回復期:痛みや可動制限が部分的または完全に回復してきます。

 

 四十肩・五十肩の多くの人は手術を必要とせず、痛み止めの注射や運動療法、カイロプラクティックなどの徒手療法で改善を見込むことができます。

四十肩・五十肩の症状

 

 四十肩・五十肩の代表的な症状は、肩が動かせなくることです。そのその他では以下のような症状があります。

 

・鈍く広がる痛み:痛みは肩全体から時に上腕にまで広がり、肩を動かすことで強くなります。痛みは通常急性期(炎症期)に強く感じ、回復期に向かうに従い弱まる傾向があります。

 

・肩関節の可動制限:肩の関節包が硬くなるにつれて、可動制限が強くなっていきます。四十肩・五十肩の人は基本的に腕を動かした時に痛みが出るため動かさなくなっていき、それが肩関節の可動制限をより強くしていきます。肩の可動制限は状態が改善していくと共に回復していく傾向があります。

 

・睡眠の質が低下:痛みが起こっている方の腕を下側にして寝ることが、痛みがあるために難しくなります。

 

 また、糖尿病を患っている人は四十肩・五十肩の症状が強くなる傾向があります。

それぞれのステージで特徴的な症状

 

 四十肩・五十肩それぞれのステージで特徴的な症状は以下のようなものになります。

 

・急性期(炎症期):急性期は約6週間から9ヶ月の間と言われ、痛みが徐々に強くなっていくのが特徴です。痛みが強くなっていくと痛みで肩を動かさなくなり、可動制限が強くなっていきます。特に夜に痛みが強くなり、睡眠にも影響が出ることが多いです。痛み止めの薬を服用しても十分な効果を感じられないぐらい、痛みが強く出ます。

 

・慢性期(拘縮期):慢性期は約4ヶ月から6ヶ月の間と言われ、痛みが少しずつ弱まっていく代わりに、肩関節の可動性が失われていき、日常の服を着る動作などが難しくなります。また可動性の減少が影響して、肩関節を安定させている筋肉にも弱化が起きやすくなります。

 

・回復期:回復期は約6ヶ月から2年間続くと言われ、肩の可動性も部分的もしくは完全に戻っていきます。また痛みも減少していくことが多いです。

 

 一般的には四十肩・五十肩で一番辛い時期は急性期であり、痛みを強く訴える人が多いのもこの時期になります。

四十肩・五十肩のリスク要因

 

 四十肩・五十肩が起こりやすい年齢は40〜60代と言われていますが、どの年代にも起こる可能性があります。リスク要因としては以下のようなものが挙げられます。

 

・性別:男性よりも女性の方が四十肩・五十肩になりやすいと言われており、その要因としては閉経による女性ホルモンの変化が影響していると言われています。

 

・糖尿病:基礎疾患として糖尿病を持っている人は、一般の人に比べ10~20%ほどリスクが高いと言われています。正確な原因は未だ分かっていませんが、専門家の間ではグルコースが肩の関節包にあるタンパク質に付着することで、肩関節の可動性が減少しやすくなると言われています。また糖尿病の方は両側の肩が影響されることが多いです。

 

・その他の疾患:糖尿病以外にも以下のような疾患を持っている人は、四十肩・五十肩になりやすいと言われています。

 ・バセドー病、橋本病

 ・うつ病

 ・循環器疾患

 ・肺癌

 ・乳ガン

 ・パーキンソン病

 

・肩を動かさない期間が長いことによる影響:外傷による怪我や手術後などで肩を動かせない期間が長期間に及ぶと、可動性の減少や炎症が通常より起こりやすくなるため四十肩・五十肩のリスクが上がります。

 

・その他の肩の怪我による影響:石灰沈着性腱板炎やローテータカフの損傷などに伴い、四十肩・五十肩が起こることがあります。

 

 利き腕によって四十肩・五十肩が起きやすくなるのかに関しては、専門家の間でも議論がされています。ある専門家は利き腕とは反対の腕がよりリスクがあるといい、利き腕の影響は特にないという専門家もいます。

肩関節施術風景

評価方法

 

 四十肩・五十肩の評価方法は、ローテーターカフの損傷など他の肩関節に関わる疾患を除外することで、評価をしていきます。 四十肩・五十肩の評価を行う際のカウンセリングや身体検査では以下のようなことを確認します。

 

カウンセリング

 

・痛みの質や日常生活への影響はどれほどのもなのか。

・肩がどのぐらいの角度で痛みが出始めるか。

・痛みが睡眠に影響するか。

・他に怪我や基礎疾患を持っていないか。

・服用している薬はないか。

・以前にも四十肩・五十肩になったことがあるか。

・肩を動かすと痛みが強くなるか。

 

身体検査

 

・肩関節を色々な方向に動かした時に、しっかり動かせるのかどうか、また動かした時に痛みがあるのかも確認します。

・肩関節に対する抵抗運動を行い痛みがないかを確認します。

・肩関節を自分で動かした時と、施術者が誘導して動かした時に、痛みの違いがあるかどうか確認します。肩関節の外旋制限や自分で動かしても、こちらが誘導して動かしても痛みが出るのが、四十肩・五十肩の典型的な症状となります。

 

 痛みが強くある場合は状況により医療機関での画像診断(X線やMRI)を先に行ってもらうことで、肩関節の脱臼や変形性関節症、骨腫瘍などがないかを確認してもらう場合もあります。

四十肩・五十肩に対するカイロプラクティックケア

 

 カイロプラクティックケアで四十肩・五十肩の施術を行う際には、個々の状況に加えて肩の状態がどのステージにあるかを見極めることが重要です。急性期に関しては、炎症が強いケースも多いため肩を直接動かすなどの手技を行うと、炎症を広げる原因にもなり得るため、施術は主に肩に負担がかからないように脊柱に対する矯正や、肩以外の関節のモビリゼーションガ中心となります。反対に、慢性期や回復期には炎症が治まり、肩関節の可動性が悪くなる時期なので、積極的にカイロプラクティックケアにて肩関節のモビリゼーションを行っていきます。

 

 脊柱を含む肩関節の機能を正常に戻すことで、肩に掛かる負担の軽減が出来るため、回復までの期間の短縮が見込めます。四十肩・五十肩でお悩みの方は一度ご相談ください。